迷走の果て、現行案?=責任問われる首相−普天間

迷走の果て、現行案?=責任問われる首相−普天間

 鳩山由紀夫首相が解決に「職を賭す」とまで言い切った米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)移設問題は、同県名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てて滑走路を建設する現行案に回帰しつつあるようだ。昨年12月に現行案を白紙に戻して以降、政府は代替案を検討しては、米国や地元の事情から断念することの繰り返し。首相に対する沖縄の期待は、怒りと失望に変わり、その政治責任が厳しく問われようとしている。
 20日の参院外交防衛委員会自民党山本一太氏は、政府が米側に移説先を「辺野古周辺」と伝えたことを念頭に、「なぜ現行案では駄目なのか」とただすと、北沢俊美防衛相は「現行案の全面否定からスタートしたのではない」などと、苦しい答弁。首相は同日夜、記者団から現状をただされると「5月末に向けて、私は最終的な努力を行っている」とかわした。
 就任前に「最低でも県外」と発言した首相は、鹿児島県・徳之島への移設を模索したものの、地元の反対などから、「部隊の一部移転」、さらには「訓練の一部移転」へと後退。シュワブ陸上案や沖縄県うるま市勝連半島沖埋め立て案も浮上したが、程なく消えた。
 辺野古の浅瀬にくい打ち桟橋方式で代替施設を造る案は、テロへのぜい弱性を理由に米側が拒否している。首相は、自ら「自然への冒涜(ぼうとく)」と否定した埋め立て方式を採用せざるを得ない状況に追い込まれつつある。
 そもそも、くい打ち桟橋方式は、かつて米側が反対した案。防衛省関係者は、再び持ち出したことについて「官邸から『自民党と同じことはできない』と指示されたから」と打ち明ける。政府が急きょ検討し始めた、ヘドロを用いた「環境造成型」の埋め立て工法も、現行案の全面採用だけは避けたいとする首相の意向が背景にある。
 首相は21日に来日するクリントン国務長官に検討状況を説明。月内に米側と大枠合意にこぎつけ、「5月決着」を果たしたと主張したい考えだが、首相への風当たりが強まるのは必至だ。(2010/05/20-20:26)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010052001024