日米で「玉虫」合意=普天間先送りで浮上

日米で「玉虫」合意=普天間先送りで浮上
米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)移設問題で「5月末決着」を事実上断念した鳩山由紀夫首相。度重なる迷走で事態打開の糸口は見えず、野党側は首相の政治責任を厳しく追及する構えだ。こうした中で、政権内では14日、移設先はキャンプ・シュワブ沿岸部がある同県名護市辺野古の周辺とし、工法など詳細は実質的に先送りする「玉虫合意」を日米で交わし、5月末を乗り切るシナリオが浮上した。
 首相は同日、「米国、その前に沖縄と全国、特に移設先にかかわる地域に理解をいただいて、これでいこうという方向でまとめていく」と強調した。平野博文官房長官は15日、一部の訓練移転先と想定する鹿児島県・徳之島の関係者と会談するため鹿児島入り。27日には首相が全国知事会の会合に出席し、基地負担の分担を呼び掛ける考え。
 しかし、平野氏の鹿児島再訪問に対しては、徳之島を地盤とする徳田毅衆院議員(自民)がブログで「島民の不安や動揺が増幅される」と批判。知事への協力要請にしても、訓練の分散移転先として温める個別の自治体への根回しは行われておらず、「地元の理解」取り付けへの道は遠い。
 一方、移設先に関し首相は「最低でも県外」との方針を撤回。政府はシュワブ沿岸部を埋め立てる現行計画を修正し、くい打ち桟橋工法を採用する案を軸に米側と協議に入った。12日にワシントンで開かれた実務者協議で、米側は桟橋工法について(1)工事の長期化が予想される(2)台風への耐久性に問題がある−などの問題点を列挙、慎重な姿勢を示した。
 依然、日米に隔たりはあるものの、移設場所については、米側も「辺野古への回帰」に異論はない。このため、首相周辺は「互いに方向性を決め、一定の幅の中で合意すればいい。細かい工法(の詰め)は6月以降だ」と指摘。日米が折り合える範囲で合意し、「5月末決着」と見なす姿勢をにじませた。両国は週明けも実務者による協議を続け、接点を探る。
 ただ、米国との間で帳尻を合わせただけで、首相が窮地を切り抜けられるかは未知数だ。連立を組む社民、国民新両党が政府案を決めるための基本政策閣僚委員会の開催に難色を示すなど、与党内調整ももたついている。自民党谷垣禎一総裁は14日、「首相は国民との信頼を完全に喪失した。解決するにはお辞めいただくしかない」と述べ、首相退陣を要求した。(2010/05/14-20:14)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010051401131